人間は恒温動物ですが、実は、深部体温(脳や内臓など体の内部の温度)は、日中の活動とともに上がり、寝る直前から寝ている間は下がっていく、1℃くらいの幅の変動リズムを持っています。この深部体温の変動リズムはサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれる約24時間周期で一周する体内時計の基準となるとても重要なリズムです。
逆に、深部体温が上がっていかなければ脳や筋を活発に働かすことができませんし、深部体温が下がっていかなければ質の良い睡眠は得られません。ですから、ビジネスパーソンとしてパフォーマンスを上げるためにも、深部体温がメリハリを持って変動する状態を維持していくという考え方が非常に重要となってくるのです。
深部体温の変動リズム
深部体温の変動をコントロールしているのは、脳の視床下部にある視交叉上核という部分です。視交叉上核はその働きから、体内時計の親時計(マスタークロック)と呼ばれることもあります。視交叉上核は、朝の光の刺激が目から入ってくると、他の情報と統合し、メラトニンというホルモンの分泌を止めます。(この時、人がそれぞれ持っている約23時間~25時間の体内時計は24時間の時計に補正されます。)そして、分泌を止めてから約14時間経ち周囲が暗いとメラトニンの分泌を再開します。メラトニンは深部体温を下げる作用を持っているため、分泌が止まってからは段々と深部体温が上がっていき、分泌が始まってからは深部体温が下がっていきます。このようにして24時間周期の深部体温の変動リズムは生み出されています。
光の刺激
深部体温の変動リズムに一番影響を与えるものは「光の刺激」です。朝起きたら朝日を部屋に取り込み、日中は明るい場所で過ごすようにしてください。また、メラトニンは200ルクス程度の光でも分泌が抑制されてしまいます。室内照明やテレビ、スマートフォンなどのディスプレイはメラトニンの分泌を抑制するのに充分な明るさを持っているので、現代人は特に注意が必要です。メラトニンは分泌が始まって約1時間後から体温を下げ始めるので、少なくとも寝る1時間前からは、室内照明を暗くしディスプレイの使用を控えた方が良いと思います。
光の刺激のメリハリを意識して、平日も休日も同じように規則正しい生活をすると、まず親時計が整い、2週間くらいかけて沢山の子時計が同調していき体内時計全体が整っていきます。そうすると、深部体温に続いて循環系、ホルモン系、自立神経系などの人体の様々な機能がメリハリを持って正常に動き、人間が持っている力を最大限に発揮できるようになっていくと思われるのです。