品種ごとのクオリティーシーズンというのは日本国内ではあまり開きがありません。前述の晩成種「やぶきた」を北限の東北として、早稲品種である嬉野茶の「さえみどり」を比較しても一番茶の収穫時期の差は2ヶ月もありません。気候からみた日本は意外と狭いようです。
温暖地は、2番茶以降の生育も早いので規格品の量産が可能となり、機械摘みでも新芽新葉が生え次第繰り返し採摘ができるというわけです。大規模供給の農場も九州には多く点在していますが、俳句大会があまりに有名な「伊藤園」もその一つで九州に本格的な広域農地、契約農家を占有してます。
そして同じ緑茶でも「煎茶」「抹茶」「玉露」「かぶせ玉露」は皆同じ品種の茶木からつくれるのですが、栽培方法や加工段階の手間ひまにひと工夫があるのです。
煎茶 | 日照時間は自然のリズム一芯2葉の採摘が基本 | 萎凋2日、蒸しで発酵を止め柔捻、乾燥する。水色は黄緑の透明色。 |
煎茶 (深蒸し茶) | 煎茶と同様だが3葉以降の葉も混じる場合がある | 萎凋2日、蒸し時間が煎茶の2倍ほど長いので繊維質が溶け込みやすく濁色。 |
抹茶(薄茶向け) | 新葉が柔らかいうちにほぼ完全に遮光して栽培。手摘みで収穫。 | 摘み取った葉は碾茶と呼ばれ萎凋のみで蒸し工程はない。 |
抹茶(濃茶向け) | 新葉は緑になる前に収穫まで遮光する。 | 工程は同様だが味はさらにまろやかで上品。 |
玉露 | 新葉は緑になってから。遮光は7割ほどで、場所を交互に変えながら遮光する | 煎茶と同じ工程だが、葉姿を整えるため手摘みが基本。蒸し時間は短め。 |
かぶせ玉露 | 呼称違いで玉露と同様の時もある。遮光する日数が玉露より短い。 | 玉露に同じ。機械摘みあり。柔らかい茎や3葉も混じることがある。 |
芽茶 | 新芽、脇芽のみを集めた緑茶で、上記全ての芽の部分をあわせて製品にすることもある。 | 煎茶、玉露の製造工程のふるいで落ちる出物。柔らかい味 |
粉茶 | 上記全てをふるい分けた最後に残る茶粉 | 寿司屋の「がり」がこのお茶。 |
番茶(京番茶以外)、玄米茶 | 5、6葉以降の硬い大きな葉を刈り取ったもの。遮光栽培はなし。 | 蒸しは標準、さっぱりとしたワイルドな苦味が特徴。番茶にはぜた玄米を足すと玄米茶になる |
京番茶、ほうじ茶 | 京番茶は番茶と同様、収穫期の最後に刈り取った下葉全部なので葉が大きい。全国的には、ほうじ茶とほぼ同義 | 番茶の工程に軽い焙しがはいるのが特徴(ほうじ茶と大体同じだが、葉をよらないものも多い) |
ほうじ茶は収穫の最後に採摘される硬い大きな茶葉
番茶やほうじ茶は4葉5葉以下を、剪定を兼ねて刈り込んだときの葉で作られるお茶です。摘むとなると大きさや収量の面で、やはり成長の早い温暖地に利があります。
対して寒冷地の茶の葉は寒さに耐えて生育します。硬くてちょっと苦く小ぶりですので量産品、規格品には向きません。ただ、温かいものが飲みたい時、北限の茶は茶の香りがするだけで何だか嬉しいのです。
緑茶の美味しい淹れ方
- 茶器、茶碗は温めておく
- 煎茶は70度、玉露は40~60度、粉茶、芽茶、抹茶は湯のたぎりを柄杓で一掬が適せんとされています。番茶や茎茶、ほうじ茶は100度。
- 茶葉は高価なものほどまろやかでアミノ酸含有が多い傾向ですが、深蒸し茶であるならば、100g1500円位~の予算だとはずれがない。
- 蒸らし時間は蓋をすると香りが逃げない
- 蒸らし時間は煎茶1分30秒~(深蒸し茶は30秒~40秒)、玉露は2分~3分、抹茶はすぐ、番茶、ほうじ茶は15~30秒程度がよい
茶葉の選び方
煎茶、玉露=青々とした緑色の茶葉は水色、香りは薄めです。葉姿が針金のように綺麗によれているものが高級とされていますが、抹茶は値段通りで大体あっています。30g 5000円前後の濃茶用茶葉がおすすめです。茶葉の購入は保存の工夫や自分ではあまり飲まないアレンジレシピが要らない飲みきれる量を適当としてください。